「absence」

am 4:00、シャッターを切る。
私の声は眠る人に届かない。
暗闇に浮かぶ彼らは、安らかに独りぼっちで、
本人不在のままベールを脱ぐ。
そのハダカの顔を前に、私は何ひとつ
彼らを知らないことに立ちつくす。
呼吸の音が静かに響く暗闇の中、
解決されない小包を受け取ったようで、
その不可解さに見とれては
ただ途方に暮れる
 
10×12inch 40peace
「absence」
馬場磨貴 写真集
蒼穹舎 2008年発行 定価:3,600円
On SALE
「ふたり」 第33回準太陽賞受賞作。

双子である自身と妹。
2人の間には、自己と他者を
隔てる壁がない。
透明でほとんど破れかけた
薄い膜がひらめいているだけだ。
そのたまらない居心地の良さと、
自己が消滅していくような不安。
曖昧な2人の境界を静かに行き来し、
「わたし」と「わたしたち」の意味を探った。
愛憎、共感、反発。相反する感情のゆらぎ。
10×12inch 30peace
 
「cocu」

新聞・雑誌やインターネット、そこには沢山の女性のヌードがさらされている。日々目にする性的に消費される女たち。
そしてそれと対極な女性像として、母性があふれる幸福なマタニティフォトがある。

cocuはフランス語で「寝取られ男」。バカンスを終え、妻を残し一足先に1人電車に乗る夫たち。その電車をcocuと呼ぶ。

性の対象でもなく、生殖からも離れた女の性。そこでは男の存在さえ必要がないのかもしれない。性の玩具に、私は背筋の伸びた女の後姿を見る。
11×14inch 40peace 
329×483inch 20peace
「We are here」

いのちをつくる
いのちをそだてる
いのちをうしなう
いのちをつくる
のちをそだてる
いのちをうしなう
いのちをつくる

わたしたちは奪わない
わたしたちは踏みつけない
わたしたちはとても弱い
わたしたちはそっと手をつなぐ

振り子の両端で落ちそうになりながら

命も死もまるごと抱え、わたしたちはあるく
いつか地上の生物が消える日まで
わたしたちは命をつなぐ
11×14inch 50peace
728×1030inch 20peace

We are here
馬場磨貴 写真集
赤々舎 2016年発行 定価:4,000円+税
On SALE.